第31回機械工業デザイン賞 経済産業大臣賞-松下通信工業

平成13年7月27日 日刊工業新聞より掲載

装置の識別に有効色を施し、上下部に採用した自然素材である石材の質感は、白一色の装置が並ぶクリーンルームでは異彩を放つ。従来の安全性、使用性、施工性に加え、心理的感性まで追求したデザインは、作業者を重視した総合的な視点から生み出されたものだ。

松下通信工業は98年にデジタルミキサーで当時の通産大臣賞を受賞し、今回2度目の最高峰を射止めた。世界初の電極接続技術(TPSプローブ)の開発に携わった石坂政明半導体計測プロジェクト担当参事は「半導体業界の今後のモノづくりを変える」と意気込む。

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96年10月、技術の核となるTPSプローブの開発に着手。1年後にウェーハのまま電極接続できることを確認、装置開発に着手した。「初めは電極接続ができるということを確認しただけで、安定化させるのに3年かかった。接続不良率100ppm(1万分の1)以下にまで安定化できるとは考えていなかった」(石坂参事)と振り返る。

TPSプローブは松下電器半導体社と、プローブの性能を引き出すための装置開発では加熱冷却および真空技術を持つオリオン機械、バーンインテストに必要な信号発生部の開発ではベンチャー企業のテクノスペクトラムとそれぞれ共同開発した。またウェーハの熱膨張を制御し確実に電極接続するため、ウェーハの電極と接続するバンプの材料ではHOYAやJSRの力を借りた。プローブは1平方センチメートル当たり1キログラムの大気を利用してプローブ内を真空にすることで、安定した接続を実現しているが、ウェーハが壊れてしまうため、真空状態には1回しかできない。完全な真空を維持にするため、セラミックリングや真空センサーで確実性を高めた。

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装置開発ではウェーハ1枚で300ワット以上になる発熱に悩まされた。ウェーハ運搬用標準カセットの積載枚数は25枚。「最低でも同時に25枚のウェーハを処理する必要があり、また運搬上、装置サイズはエレベーターの寸法を考慮する必要がある」(浅井良彦デザインクリエイト部AVCデザイン室主事)からだ。

「当初は1装置8枚、4装置構成だった」(石坂参事)。しかし、これだと工場の平均的支柱最小ピッチ約5―6メートルに収まらない。装置内の冷却機能を向上することで、1装置9枚、3装置構成にすることに成功した。

「世界初の技術なので、装置も新しいイメージを出したかった。また作業者のメンタル面を意識し、なおかつデザインで性能を確保する仕様にした」(浅井主事)といい、最新技術でモノづくりを変えるだけでなく、装置デザインでも今後の機械装置のあり方に新風を巻き起こしそうだ。

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機械工業デザイン賞とは

日刊工業新聞社が経済産業省の後援を得て、工業製品のデザインの振興と発展を目的に 1970 年に創設された。

これまで受賞した多くの優秀な作品は、外観面や技術面において、その時代のデザインの方向を示唆する先端製品として、高く評価されている。

審査対象は主に生産財で、外観的なデザインにとどまらず、製品そのものの性能や品質、安全性、人間工学面、環境への対応、社会性、経済性、市場性など商品に求められるあらゆる面を総合的に評価・選定される。

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